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暗闇の世界 [鎌倉つれづれ文]

最近、ダイアログインザダークと言う暗闇体験イベントが人気を集めています。
ダイアログは、「対話」、インザダークは、暗闇の中と言う意味で、暗闇の中での対話と言う名のこのイベントは、日本で開催されて以来、これまでにおよそ16万人が体験、根強い人気に支えられてきました。
参加者達は漆黒の闇の中に8人程のグループを作り入って行きます。
暗闇の中の案内役は、アテンドと呼ばれる目の不自由なスタッフです。
アテンドのサポートのもと、暗闇の中では、視覚以外の感覚、即ち、触覚、嗅覚、味覚そして聴覚などの五感を働かせて、様々なシーンを体験します。
そこで見えてくるのは、隠れていた本当の自分。
自分にとって大切なものに気がつくそうです。
この暗闇体験イベントは、ドイツから始まり、現在は世界30か国余りで実施されています。
そして、このイベントを日本に初めて導入したのが志村真介(シムラシンスケ)氏です。
志村氏が初めてダイアログインザダークのことを知ったのは、ウィーンの夕刊記事でした。
彼は、その時の出会いを忘れないように、いまでもボロボロになった小さな紙片の告知記事を大切に持っているそうです。
この「博物館で闇の世界体験」と言うタイトルに、志村氏はとても感銘を受けたと言います。
ダイアログ・インザダークについて、志村氏は次のように説明します。
「このイベントは暗闇の中で行われるのですが、人は、元々暗闇は、好きではなかったと思うのです。
それで、火を持ったり、言葉を持ったりしたんだと思います。
例えば、人の話や音楽を集中して聞こうと思う時に、目をつぶったりしますよね。
目をつぶって視覚を閉ざすことによって、五感は研ぎ澄まされ、見えないけれど見えてくるものがあると思うのです。
私達は子供から大人になってくると、固定観念とか自分の立場や役割と言うものがついてくると思うのですけれども、暗闇の中では、それが自然に溶けて、ただの自分になるのではと思うのです。
ただの自分になると人の良さや人の温かさを改めて感じることができるようです。
そこから、自分中心ではなくて、相手を慮る気持ちが芽生えてくるようです。」と話ます。
更に、暗闇の内部の様子について、志村氏は、次のように話を続けます。
「暗闇の中では、いろいろな施行が用意されています。
例えば、森の中には、落ち葉が敷かれたフカフカの床があったり、本物の木が生えていたり、それらに触れる前に匂いがしてくるのです。
そこでは、土ってこんな匂いだったなぁとか子供の頃に森に入るとこんな感じだなと思い出してくるのですが、それは、頭で想い出すというよりも何か自分の体の細胞や皮膚から蘇ってくるような感覚だと言います。
これにより体験者は、初めは不安だった気持ちが、段々にリラックスした状態に変わってくるそうです。
そして日常の生活体験をした後で、最後の方には、味覚を試すドリンクを飲む場所もあります。」と話ます。
わずか90分前に他人だった人が、暗闇の中で、いろいろ協力し、様々な事を体験して、お互いに経験を共有することによって、劇的な変化をもたらします。女性は美しくなるし、男性はりりしくなり、その人らしさが出ている状態で、出口からでてきた時の表情を見た時に、志村氏は、このダイアログ・インザダークを日本に紹介したいと思ったそうです。
紹介することを志した当初は、会場内の誘導灯を消す手続きすら苦労があったそうです。
そして、様々な問題を仲間と乗り切った志村氏は、日本で初めてのダイアログインザダークを1999年11月に、二日間だけの短期イベントとして東京で開催しました。
その時は、200人の観客が体験をしたそうです。
初めて体験した方々が暗闇から出て来た時の姿を見た時、ヨーロッパで受け入れられている感動と同じ感動を日本の方々も感じていると志村氏は思ったそうです。
その後、10年間は、短期イベントと言うかたちで、日本各地で、開催を続けました。
その中で、とても印象に残った人がいたそうです。
その人は、喉の声帯を切除し、声が出せなくなった若い女性でした。
せっかく様々な体験をして、声も出さずに体験だけするのは残念だと言うことで、何か別の方法で、感情表現をしてもらうことになり、話合った結果、彼女には、口笛で表現してもらうことにしたそうです。
しばらくすると口笛のさえずりが聞こえてきました。
始めは、彼女が口笛を吹いていたのですが、やがて、彼女と一緒にいた人もそれにつられるように彼女に合わせて口笛を吹き始めたそうです。
すると会場内にいる他のグループの人達も、それに呼応するように、口笛を吹き始めたと言います。
会場は四方から口笛が鳴り響き、その口笛は、やがて曲となりハーモニーとなり、場内は、口笛により皆の心は一体化したそうです。
これは、人間が助け合おうと、「和を尊ぶ」ことを重んじて、言葉の代わりに口笛を使い、心を通い合うようにしたのではないでしょうか。
やがて、順風満帆で、軌道に乗ったと想われた頃、パートナーも見つかり、常設化に運営方針を変えようとした途端、パートナーになった企業が倒産すると言う不運にあいました。
更に、常設と言う形式になると、いつでも来れると言う心理がはたらき、お客さんの足は遠のいていったそうです。
この窮地に志村氏は、何よりもスタッフとの「和」を重視するため、徹底的に対話を重ねたそうです。
そこで、志村氏は、体験する内容を随分考え直した結果、今迄の一般向けの内容とは別に、企業の人材育成プログラムを取り入れることにしました。
そのためドイツからトレーナーに来てもらいスタッフ全員がトレーニングを受け、現在は平日は、企業研修として、チームワークやリーダーシップが身に付くように、テーマ別のコースを設けるようにしました。
これが功を奏したのか、平日の稼働率も徐々に上がっていったそうです。
また、ヨーロッパでは、学校でも、情操教育の一貫として、ダイアログインザダークを体験する授業があるそうです。
そこで日本の学校でも、子供達にこのプログラムを体験してもらえれば、ダイアログインザダークが根付くことにつながるのではないかと考えた志村氏は、佐賀県で、ふるさと納税を利用してダイアログインザダークを開く方法があることを知り、早速開催しました。
その際、ダイアログインザダークを体験した、7歳の女の子がアンケートに答えてくれ、次のようなことを書いてくれました。
「体験が終わった時には、自分は本当に小さい世界にいるんだなと思いました。
目が不自由な人はどんな訓練をしたんだろう、どんな訓練をして慣れたんだろう。
不自由な人は、私よりも自由な力を持っているんだな。
目に頼っていると本当の気持ちを知れないんだ、本当の心を持てないんだ。
もっともっと本当の心を持たせてあげたいな。
本当の気持ちも持たせてあげたいな。」と書いてくれたのです。
この体験で、女の子は、「不自由な人は、私よりも自由な力を持っている」と感じてくれたのです。
そしてこの子は、クラスの少し仲の悪くなった友達と暗闇の中に入って、再び体験をしてくれたそうです。
自分のできることを自分のできる形で実行するとはとてもすばらしいことだと思います。
もしも、このプログラムが本格的に学校教育に採用されれば、アンケートに答えてくれた女の子と同じような気持ちを持つ子供達が体験を通じて、その後の人生や社会までも変えるかもしれません。
そもそも、人間は自ら暗闇には入りたがらないと思うのです。
しかし、人間が社会の中で生きるようになってから、全く今の環境と違ったところに、自己を置いた場合、自分がどう変化するのかとか、一緒に行った人との関係性はどうなるかなど「怖いもの見たさ」の心境で、試したくなるのではないでしょうか。
つまり、何かを見て面白いと言うことでは無く、自己の変化や対人関係の変化を確認せずにはおけなくなると思うのです。
そんな暗闇が持っている力は、人を変えてしまう魔法みたいだと志村氏は言います。
例えば、人は、見えないことで、情報の約8割が使えなくなると言われます。
それにより、触覚、嗅覚そして聴覚は鋭くなります。
その結果、初対面の人とは、見えない体験を共有することで、心の壁が無くなる。
2009年に志村氏は、渋谷区神宮前のビルの地下に、念願の常設会場を作りました。
そこで、来場した人々に、暗闇で、起きる多くの感動の体験を提供しているそうです。
あなたも暗闇の中で、自分にどんな変化が起こるか体験したいと思いませんか?

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